市場規模1兆円とまで言われる一大産業に拡大している塾業界(学習塾・予備校)ですが、少子化と言われる現在でさえその歩を緩めることなく着実に伸びている背景には、どのようなことが考えられるのでしょうか。もともと日本人は教育熱心であるというベースがあるのはよく知られていると言っていいでしょう。どんなに家計が苦しくとも、子供の教育費は確保するということはよく知られています。世界的に見ても子供一人当たりの教育費が、高水準にあるという報告がされている一方で、逆に公的資金の教育機関への支出のGDP比が、最低であるという報告もされています。これは一体なにを意味しているのでしょうか。公的資金が初等中等教育つまり義務教育とされる小・中学校と高校レベルへほとんどが割り振られる一方で、高等教育と言われる大学レベルは私費負担を強いられる事も合わせて考えると、教育費が高水準となるのも自ずと理解できるのではないでしょうか。結局公的支援だけでは十分賄いきれずやむを得ず教育費を確保せざるを得ない、という構図が見えてきます。昔は、寺子屋だったり各藩のエリート養成の藩校、更に志を一にする若者が集まって学ぶという私塾がありました。私塾ですから、当然お金が必要です。農民はお金の代わりに農作物を提供してそれに充てるなどで、子供を通わせていた時期もありました。私塾側でもそれぞれ苦労して維持運営していたと思われます。このような教育にはお金がかかると言った意識が、日本人の間には固定観念として植え付けられていたと推測されます。このことは、根差すところ自分たちは苦労してでも将来も担う子供たちには、日本をしょって立ってもらえるような人間に育ってほしいという親たちの願いが込められていたのではないでしょうか。こういった日本人気質(世界中の親も同様かもしれません)とも呼べる風土が今の塾業界を支えていると言ってもいいのかもしれません。他国の教育が児童労働からの解放を意図して生まれた教育制度とは一線を画する、日本独自の風土から生まれた教育の構図ともいえるかもしれません。
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